緑の地球ネットワーク

なぜ、大同だったのか?
▼「美人の産地といい酒」
大同を選んだのは私たちではありません。北京で、中華全国青年連合会の幹部(当時)に相談したら、大同を選んでくれました。「緑化にたいへん熱心です。美人の産地として歴史的に有名で、いい酒もあります」とのこと。もうちょっと前の日本で、「天国いいとこ、一度はおいで。酒はうまいし、ねえちゃんはきれいだ……」という歌が流行していました。

▼九年は旱で、一年は大水……
大同の農村を最初に訪れて、「だまされたあ!」と感じました。自然環境があまりにきびしいのです。大同市陽高県の民謡こういう一節があります。「靠着山呀,没柴焼.十箇年頭,九年旱一年?…」。まさに20年間の実感です。
山には木がありませんでした。毎年のように干ばつになります。年間降水量は平均400oですが、その3分の2以上が6月半ばからの3か月に集中し、その他の季節は降りません。ところが、夏の陣雨は1時間70mmにもなり、畑や山の土を流して、深刻な水土流失を引き起こします。

▼「♪打倒日本!打倒日本!♪」
そのうえに「歴史問題」があります。第二次世界大戦の期間に、山西省でも、大同でも、日本軍による大きな被害を受けました。平型関の戦闘があったのは大同市霊丘県ですが、そのあと被害が拡大したようです。この協力活動の初期、大同の農村を回っていた日本側スタッフのあとを数人の男の子がつけ、「♪打倒日本!打倒日本!♪」と節をつけて歌いながら、小石を拾って投げるまねをしていたと、ずっとあとになって、そのうちの一人が話してくれました。
この緑化協力活動は最初のあいだ、失敗の連続でしたが、それを乗り越える過程で相互の理解も深まってきました。

▼北京の水源&風口
大同は北京の水源にあたります。山西省西北部の山地に源をもつ桑干河は大同の中央部を西から東に流れ、洋河などと合流して、永定河になります。永定河を北京市と河北省の境界でせき止めているのが官庁ダムで、北京の大事な水ガメです。
一方、河北省と山西省の境界は、太行山の大山脈です。その北には大馬群山脈があり、北京の周囲には燕山山脈があります。先ほどの桑干河・永定河の流域だけが低い。春先の風砂は、北京・天津のほうからみると、ここから吹き出してくるようにみえます。

▼国家プロジェクトが集中
桑干河の流域では、早くも1950年代から大植林運動がとりくまれましたが、そのとき植えられたポプラが水不足などで伸び悩み、小老樹になってしまったのは残念なことです。その後、1980年代からの三北防護林(緑の長城計画)、太行山緑化工程、京津風砂源地理工程、首都水資源保護工程などの国家プロジェクトが大同には集中しています。